介護の未来:迫りくる2025年問題:認知症介護のその先と家族が今できる備え

日本は世界でも類を見ないスピードで高齢化が進行しており、2025年には団塊の世代が全て75歳以上となり、4人に1人が後期高齢者という超高齢社会に突入します。この急激な高齢化に伴い、認知症患者の増加が予測され、2025年には約700万人に達すると推計されています。これは65歳以上の高齢者の約5人に1人に相当します。認知症介護は家族の大きな負担となり得るため、2025年問題を見据え、今から準備を始めることが重要です。



■2025年問題とは? 超高齢社会の現実と認知症介護への影響
2025年問題とは、団塊の世代が全て75歳以上の後期高齢者となることで、医療や介護の需要が急激に増加し、社会保障制度や地域社会に大きな影響を与えることが懸念されている問題です。特に認知症患者の増加は深刻です。厚生労働省の推計では、2025年には認知症患者数は約700万人に達するとされており、これは実に65歳以上の高齢者の約5人に1人に相当する数字です。認知症は、記憶障害や判断力の低下など、日常生活に支障をきたす症状が現れる病気であり、進行に伴って介護の必要性が高まります。
一方で、介護を担う人材は不足しています。介護の仕事は、身体的にも精神的にも負担が大きく、離職率が高いという現状があります。さらに少子化の影響で若い世代の人口が減少していることも、介護人材不足に拍車をかけています。増え続ける介護需要に対し、介護サービスの供給が追い付かないという深刻な事態が予測されます。
このままでは、必要な時に必要な介護サービスを受けられない人が増加し、介護を担う家族の負担も限界に達してしまいます。2025年問題は、単なる数字上の問題ではなく、私たちの生活に直結する、非常に現実的な課題なのです。特に認知症の方の介護は、他の介護と比べても、家族の負担が大きいと言われています。認知症の症状は多岐にわたり、24時間365日の見守りが必要となるケースも少なくありません。


■2025年問題が認知症介護の現場にもたらす具体的な変化
2025年問題は、認知症介護の現場に様々な変化をもたらします。まず懸念されるのは、介護サービスの不足です。介護が必要な高齢者が増加する一方で、介護人材は不足しているため、介護サービスを利用したくても利用できない「介護難民」が増加することが予想されます。特別養護老人ホームなどの施設は、現在でも入所待機者が多く、入所までに数年待ちという状況も珍しくありません。2025年には、この状況がさらに悪化し、施設への入所はますます困難になるでしょう。
訪問介護やデイサービスなどの在宅介護サービスも、人材不足により十分に提供されなくなる可能性があります。また、介護保険制度は、高齢者の介護を社会全体で支える仕組みですが、急激な高齢化により、財政的な課題も深刻化しています。介護保険料の引き上げや、サービス利用時の自己負担割合の増加なども検討されており、利用者や家族の経済的な負担が増える可能性もあります。
こうした状況の中で、家族介護への依存はさらに高まることが予想されますが、家族介護にも限界があります。特に認知症の方の介護は、身体的な介護だけでなく、精神的なケアも必要となり、家族の負担は非常に大きくなります。また、介護離職の問題も深刻です。介護のために仕事を辞めざるを得ない人が増加しており、経済的な問題だけでなく、社会的な孤立にもつながっています。
さらに、高齢の夫婦が共に認知症を発症する「認認介護」や、高齢の親を高齢の子が介護する「老老介護」も増加しています。これらのケースでは、介護者自身も高齢であるため、共倒れのリスクが非常に高くなります。医療と介護の連携も重要な課題です。認知症の方は、身体的な疾患を併発していることも多く、医療と介護の両面からのサポートが必要となります。


■2025年問題に備えるために、今、家族ができること
2025年問題は認知症介護の現場に大きな影響を与えることが予想されますが、決して悲観することばかりではありません。今から準備を始めることで、将来の不安を軽減し、より良い介護を実現することが可能です。まず、認知症について正しく理解することが重要です。認知症は、早期に発見し、適切な対応をすることで、進行を遅らせたり、症状を緩和したりすることができる場合があります。
次に、利用できる介護サービスや制度について、情報を収集しておくことです。介護保険制度は複雑ですが、どのようなサービスが利用できるのか、どのように申請すれば良いのかを理解しておくことが重要です。そして、最も大切なのは、家族で将来の介護について話し合っておくことです。本人の意思を尊重しながら、どのような介護を望むのか、家族の誰がどのように関わるのか、財産管理や成年後見制度の利用についても、早めに検討しておくことをお勧めします。
さらに、地域とのつながりを持ち、孤立しないことも大切です。地域には、認知症の方やその家族を支援する様々な活動があります。例えば、認知症カフェは、認知症の方やその家族が気軽に集まり、交流できる場です。そして、介護者自身の心身の健康を守ることも忘れてはなりません。介護は長期にわたることが多く、介護者自身の心身の健康を維持することが、良い介護を続けるためには不可欠です。



2025年問題は、私たちに多くの課題を突きつけていますが、同時に、これからの介護のあり方を考えるきっかけにもなります。認知症の方を介護されているご家族は、肉体的にも精神的にも大きな負担を抱えていらっしゃることと思います。介護は長期戦です。ご自身の心身の健康を守りながら、無理なく介護を続けるためにも、今からできる準備を始め、家族、地域、そして社会全体で、認知症になっても安心して暮らせる社会を築いていくことが必要です。(スタッフ:たか)