アルツハイマー病治療に大きな期待が寄せられる新薬「ドナネマブ(製品名:ケサンラ)」の保険適用が2024年11月20日から始まります。月1回の点滴投与で、病気の原因となるタンパク質を直接除去するという画期的な治療薬について、今回、紹介します。
■革新的な治療メカニズムがもたらす希望
これまでのアルツハイマー病治療薬は、主に症状を和らげる対症療法でした。しかし、ドナネマブは病気の原因となる脳内のアミロイドβタンパク質を直接除去するという、画期的な作用メカニズムを持っています。この新しいアプローチにより、病気の進行を効果的に抑制できる可能性が開かれました。
■患者に優しい投与方法
従来の治療薬が毎日の服用を必要としたのに対し、ドナネマブは月1回の点滴投与で済みます。投与期間は最長1年半(18カ月)ですが、12カ月後の検査で脳内のタンパク質除去が確認できれば、そこで治療を終了することができます。この利便性の高さは、患者さんやご家族の負担軽減につながります。
■治療費と対象者について
年間約308万円という高額な治療費は気になるところですが、公的医療保険と高額療養費制度の適用により、患者さんの実質的な負担は月数万円程度に抑えられる見通しです。対象となるのは軽度の認知症患者さんで、2033年度には約2万6000人の利用が予測されています。
■期待と課題の両面
早期発見・早期治療による高い治療効果が期待される一方で、いくつかの課題も存在します。医療機関での認知症スクリーニング体制の整備や、副作用への適切な対応が求められます。また、完全な治癒薬ではないという点も、正しく理解しておく必要があります。
■今後の展望
エーザイの「レカネマブ」に続く2例目の同種治療薬として、ドナネマブの登場はアルツハイマー病治療に新たな選択肢を提供します。医療現場での適切な活用を通じて、患者さんとそのご家族に、より良い治療の機会がもたらされることが期待されます。
アルツハイマー病と闘う多くの方々にとって、この新薬の保険適用は大きな希望となるものですが、効果を最大限に引き出すためには、早期発見・早期治療が重要です。認知症の兆候に気づいたら、できるだけ早く専門医に相談されることをお勧めします。(スタッフ:たか)
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