介護情報・知識:認知症とは何か?

高齢化社会の進展に伴い、認知症は身近な問題となっています。介護をされているご家族様にとって、認知症に対する正しい理解は、より良いケアを行うために不可欠です。今回は、認知症の定義、特徴、そして物忘れとの違いについて紹介します。



1. 認知症の定義
認知症とは、脳の細胞が様々な原因で損傷を受け、その結果、記憶や思考、理解、判断など、様々な認知機能が低下し、日常生活に支障をきたす状態が6か月以上継続している状態を指します。決して老化現象の一つではなく、脳の病気であるという認識が重要です。


2. 認知症の特徴
認知症の症状は、大きく「中核症状」と「行動・心理症状(BPSD)」に分けられます。

(1). 中核症状
中核症状は、脳の細胞が損傷することで直接的に現れる症状です。
* 記憶障害:新しいことを覚えにくくなったり、直前に起きたことを忘れてしまうなど、記憶力に障害が現れます。
* 見当識障害:時間、場所、人が分からなくなる症状です。
* 理解・判断力の障害:物事を理解したり、判断することが難しくなります。
* 実行機能障害:計画を立てたり、手順を踏んで物事を行うことが困難になります。

(2). 行動・心理症状(BPSD)
行動・心理症状(BPSD)は、中核症状の影響を受けて二次的に現れる行動面や心理面の症状です。認知症の人の性格や置かれている環境、人間関係なども影響します。
* 不安・焦燥感:物忘れによる不安や、状況が理解できないことによる焦りなどを感じやすくなります。
* 抑うつ状態:自分が認知症であるという事実への落胆や、将来に対する不安を抱くことがあります。
* 妄想:特に「もの盗られ妄想」などの被害妄想が多くみられます。
* 幻覚:実際にはいない人や物が見えることがあります。
* 徘徊:目的もなく歩き回る、外出して家に帰れなくなるといった行動がみられます。
* 興奮・暴力:自分の思い通りにならない時などに、怒りや不満を爆発させてしまうことがあります。
* 介護拒否:プライドや羞恥心から、介護されることを拒否することがあります。


3. 物忘れと認知症の違い
加齢に伴い、誰でも経験する物忘れですが、認知症による物忘れは、日常生活に支障をきたすほど深刻なものです。

(1). 老化による物忘れ
* 日常生活の中で体験した記憶の一部を忘れます。例えば、買い物に行ったことは覚えているものの、何を買うべきかを忘れてしまうといったケースです。
* 忘れたことに対して自覚があるため、何かを思い出そうと努力することができます。
* 症状が進行することはほとんどありません。
* 感情は通常通りで、興味や関心、意欲も変わりません。
* 脳の老化による自然な現象であり、年齢と共に誰にでも見られるものです。

(2). 認知症による物忘れ
* 体験した記憶そのものを忘れてしまいます。例えば、買い物に行った経験自体を忘れてしまい、再びその行動を起こそうとすることができなくなります。
* 忘れていることに自覚がないため、周囲の状況に対する理解や反応が乏しくなります。
* 症状が徐々に進行し、日常生活に大きな影響を及ぼすことがあります。
* 怒りっぽくなったり、疑い深くなったりする感情の変化が見られ、興味や関心、意欲が薄れる傾向があります。
* 脳細胞の変性など、病的な状態によって引き起こされるものです。


認知症は早期発見・早期治療が大切です。認知症が疑われる場合は、早めに医療機関を受診し、適切な治療やケアを受けることをお勧めします。ご家族様だけで抱え込まず、地域包括支援センター等の専門機関に相談することも有効です。 認知症について多くの方が正しい知識をもち、温かい目で見守ることで、認知症の方とそのご家族様が安心して暮らせる社会を目指したいものです。(スタッフ:たか)