介護情報・知識:高齢者を守る!巧妙化する特殊詐欺の手口と家族ができる対策

近年、高齢者を狙った特殊詐欺の被害が深刻化しており、令和4年の被害額は361.4億円、認知件数は1万7,520件と、前年よりも増加しています。巧妙化する手口は後を絶たず、いつ被害に遭ってしまうのではないかと、日々不安を感じて介護をされているご家族も多いのではないでしょうか。特殊詐欺グループは、被害者の心理を巧みに利用し、大切な財産を奪い取ろうとします。今回は、代表的な特殊詐欺の手口と、ご家族ができる対策について解説いたします。高齢者が安心して暮らせる社会のために、ご家族一人ひとりが特殊詐欺に対する知識を深め、対策を講じることが不可欠です。



■特殊詐欺とは?
特殊詐欺とは、面識のない不特定の者に対して、電話やはがき、インターネットなどの通信手段を用いて、現金を振り込ませたり、その他の方法で財物をだまし取る犯罪の総称です。その手口は多様化・巧妙化しており、高齢者をターゲットにしたものが多く見られます。これらの詐欺は、単にお金をだまし取るだけでなく、被害者に精神的な苦痛を与え、生活を破綻させる可能性のある悪質な犯罪です。また、特殊詐欺の背後には、暴力団をはじめとする犯罪組織が関与しているケースも少なくなく、その収益が犯罪組織の資金源となっている実態も明らかになっています。


■特殊詐欺の手口
オレオレ詐欺:親族(主に息子や孫)を装って電話をかけ、「会社の金を使い込んでしまった」「交通事故を起こして示談金が必要になった」などと嘘をつき、金銭を要求する手口です。近年では、SNSで知り合った相手とのトラブルを装うケースや、会社の同僚や弁護士などを名乗る共犯者が登場する劇場型の手口も増えています。被害者の焦燥感や親族を思う気持ちを利用する悪質な手口です。

還付金詐欺:年金や医療費、税金などの還付金があるかのように装って電話をかけ、ATMの操作を指示したり、現金を振り込ませたりする手口です。言葉巧みに被害者をATMへ誘導し、本来受け取れるはずのお金とは逆にお金を振り込ませてしまうという巧妙な手口です。

架空料金請求詐欺:身に覚えのない料金請求をはがきやメール、SMSなどで送りつけ、不安を煽って連絡させて金銭を要求する手口です。インターネットの利用料金やアダルトサイトの閲覧料金、未払いの携帯電話料金などを名目に請求してくることが多いです。「このまま放置すると法的措置を取る」などと脅迫的な文言を用いることもあります。

預貯金詐欺:警察官や銀行員などを装って電話をかけ、「あなたの口座が犯罪に利用されている」「キャッシュカードが不正利用されている」などと嘘をつき、キャッシュカードを預かったり、暗証番号を聞き出したりする手口です。その後、預かったキャッシュカードや聞き出した暗証番号を使って、口座から現金を引き出すなどの被害が発生します。

キャッシュカード詐欺盗:自宅に警察官や銀行員などを装った者が訪れ、「新しいキャッシュカードに交換する必要がある」などと言って、古いキャッシュカードと偽のカードをすり替えたり、暗証番号を聞き出したりする手口です。その後、すり替えたキャッシュカードや聞き出した暗証番号を使って、口座から現金を引き出すなどの被害が発生します。

これらの手口では、電話が主な 連絡手段として用いられることが多く、特に固定電話が狙われやすい傾向にあります。犯人は、被害者の固定電話にナンバーディスプレイが表示されないようにしたり、電話転送サービスを悪用して実際とは異なる番号を表示させたりするなどの工夫を凝らしています。また、SNSなどを利用して実行犯を募集する手口も増加しており、その背後には犯罪組織の関与が指摘されています。


■特殊詐欺の対策
・電話対策:
ナンバーディスプレイ契約をする:固定電話に誰からかかってきたかを表示させるナンバーディスプレイ機能を契約しましょう。これにより、不審な電話番号からの着信に気づきやすくなります。

迷惑電話防止機能付き電話機を導入する:非通知の電話や、あらかじめ登録していない電話番号からの着信を拒否できる機能が付いた電話機を導入することも有効です。

留守番電話を設定する:すぐに電話に出ず、まずは留守番電話で相手を確認する習慣をつけましょう。不審なメッセージであれば、無視することができます。

NTTの無料化サービスを活用する:NTT東日本・西日本は、70歳以上の高齢者とその同居家族名義の固定電話について、ナンバーディスプレイや非通知拒否などの有料契約を無料化する取り組みを行っています。積極的に活用しましょう。

・日頃からのコミュニケーション:
家族間で連絡を取り合う:離れて暮らしている家族とは、日頃から電話やメールなどで連絡を取り合い、安否確認や近況報告をしましょう。

合言葉を決めておく:家族間でしか分からない合言葉を決めておき、電話で金銭の話が出た際には、必ず合言葉を確認するようにしましょう。

詐欺の手口を共有する:最新の詐欺の手口や注意喚起に関する情報を共有し、家族全員で防犯意識を高めましょう。警察庁のウェブサイトや自治体の広報などを活用するのも有効です。

・お金の管理:
一人で多額の現金を持ち歩かない:高齢者一人で多額の現金を引き出したり、持ち歩いたりすることは避けましょう。

不審な電話があったらすぐに相談する:身に覚えのない請求やお金の話が出た場合は、すぐに家族や警察に相談するように促しましょう。

金融機関の協力を得る:金融機関では、特殊詐欺の被害を未然に防ぐための取り組みを行っています。不審な引き出しや送金があった場合には、金融機関から確認の連絡が入ることがあります。

・地域の連携:
地域の見守り活動に参加する:地域で行われている高齢者の見守り活動に積極的に参加し、地域全体で特殊詐欺の被害を防ぐ意識を高めましょう。

相談窓口を知っておく:消費生活センターや警察の相談窓口など、困ったときに相談できる場所を把握しておきましょう。

被害に遭ってしまった場合、被害者自身が責任を感じてしまうケースも少なくありません。しかし、特殊詐欺は巧妙な手口であり、誰でも被害に遭う可能性があります。「自分は大丈夫」と思わず、常に警戒心を持つことが大切です。もし被害に遭ってしまった場合は、決して一人で悩まず、すぐに家族や警察に相談してください。


特殊詐欺は、高齢者の大切な財産を奪い、心に深い傷を負わせる卑劣な犯罪です。介護をされているご家族にとっては、高齢のご家族を守るために、より一層の注意と対策が求められます。今回、ご紹介した手口や対策を参考に、ご家族で話し合い、協力して詐欺被害の防止に努めてください。高齢者が安心して暮らせるためには、ご家族の温かい見守りと、社会全体の連帯が必要です。不審な電話や訪問があった際には、ためらわずに警察や相談窓口に連絡することが重要です。(スタッフ:たか)